渋谷ヒカリエ特集

渋谷に新たに誕生する複合施設「渋谷ヒカリエ」。その魅力のすべてに迫る!

ヒカリエ誕生物語 Vol.2 “縦につながった街”が渋谷の新しい景色になる

東西をつなぐ「スカイウェイ」と結ばれる「渋谷ヒカリエ」。

吹き抜け上部に、球体の劇場の下部が位置する。ブロックと曲線の組み合わせが象徴的だ(「渋谷ヒカリエ」模型)

 渋谷開発における長年の悩みは、高低差のある地形と、街の東西が山手線によって分断されているという立地条件にあった。それを解消すべく動き出したのが、渋谷駅街区基盤整備方針。中でも谷地形をフラットにつなぐ東西方向の「スカイウェイ」は、渋谷の大動脈になる、と期待されている。完成後は、道玄坂から青山方面までが階段なしの平坦な歩道で行き来できるようになるという。そして将来、そのスカイウェイと、34階建ての渋谷ヒカリエは結ばれる予定だ。
 今回はそうした渋谷の未来図も含め、株式会社日建設計 設計部門デザインパートナーの吉野繁さんに、ヒカリエの設計やデザインについて聞いた。

吹き抜けと透明感のあるファサードが、シナジーを生み出す。

「渋谷という街の特性がうまく生かせる建物にしたい、渋谷の新しい景色をつくりたい」と語る吉野さん

 ヒカリエの設計コンセプトについて、吉野さんは「オフィス、劇場、商業施設などさまざまな“場”が混在するヒカリエの特性を生かすために、“シナジー(相乗効果)のある大きな装置”を目指し、建物全体のコンセプトを考えました。それから、渋谷という街の特性がうまく生かせる建物にしたい、渋谷の新しい景色をつくりたい、ということも強く意識しました」と言う。
 では、そのコンセプトを実現するために、外観や内装にどんな工夫を凝らしたのだろう? まずは建物の顔である正面のデザイン。ガラスを中心とした透明感のあるファサードは、渋谷駅東口方面から、ヒカリエの中すべてを見通せるようにしたい、との考えでデザインされた。「相乗効果やパワーを表現する上では、外から見えるという部分が大きい。だからガラスの透明感がいいと思っています。それに、渋谷は細い道で囲まれているので、今回の敷地のように建物全体が見渡せる場所が少ない。ガラスの向こう側が一つの空間になっている建物というのも珍しいと思います」と吉野さんは語る。
 また内部には、「アーバンコア」と呼ばれる特別な吹き抜けが作られる。その中を地下3階から地上4階までエスカレーターがつなぎ、それぞれの階へと移動可能となる。加えてアーバンコアは、地下鉄駅内の自然換気にも寄与する。吹き抜けといっても、いまや開放感を演出するだけではないのだ。ヒカリエは、建物の中に自然環境を取り込むモデルケースの一つとなるであろう。
 さらに、11〜16階の劇場「東急シアターオーブ」は、渋谷の街の上に“球体の劇場が浮かび上がる”ことを想定して設計された、いわば「宙空の劇場」だ。照明による夜の演出など、個性的で見逃せないランドマークになるはずである。

SFの世界を描いた“飛び出す絵本”のような建物になる。

 最後に吉野さんに、「ヒカリエを一言で表現するとしたら?」と聞いてみた。すると、「ヒカリエは渋谷の街路に点在するさまざまな施設を、その機能が分かるように立ち上げた、要するに広場・店舗・オフィス・劇場などが縦積みになったタワー=縦につながった街かな。そうそう、“飛び出す絵本”を思い浮かべてみてください」とユニークな答えが返ってきた。「スカイウェイ」「アーバンコア」「宙空の劇場」、そして「縦につながった街」…。まさにヒカリエは、SFの世界を描いた飛び出す絵本のような建物になるのだ。

文=田中雄二
写真=林 正