渋谷ヒカリエ特集

渋谷に新たに誕生する複合施設「渋谷ヒカリエ」。その魅力のすべてに迫る!

ヒカリエ誕生物語 Vol.5 作り手と使い手が出会う、クリエイティブスペース「8/」

クリエイティブな才能を社会と結び付ける場を提供したい。

 「渋谷ヒカリエ」の8階に、来春オープンする「8/」(呼称:はち)は、約2000m²の広さを誇る、巨大なクリエイティブスペースだ。「コート」と名付けられた多目的スペースを中心に、デザイン・アートギャラリー、ワークスペース、カフェ、デザインショップなどから構成されるが、今回はそんな「8/」のコンセプトや概要について、東京急行電鉄株式会社 都市生活創造本部 渋谷開発事業部 事業計画部の小林乙哉さんに聞いた。
 小林さんは「8/」誕生の経緯について、「もともとこの地にあった渋谷東急文化会館のDNAを引き継ぎながら、新たな文化を生み出していきたいとの思いがベースにありました。そして、それを実現させるには、文化を生み出す主体であるアーティストやデザイナーなど個人のクリエーターの方々に社会との接点を提供し、その才能をフロアとして発信していくことが大事だと考えました」と話す。そもそも“はち”という呼称も、8階建てだった東急文化会館にあやかっているという。

メンバーには、ナガオカケンメイ氏や小山登美夫氏らが名を連ねる。

47都道府県のデザインがそろう「NIPPON VISION GALLERY」をディレクションするナガオカケンメイ氏

 「ジャンルを問わず、日本中に散らばる才能を1カ所に集めたい。ただ、私たちだけで実現するのは難しいので、素晴らしい才能を選定する“目利き”の方と組んでいく必要がありました。いろいろな方々にお話を伺う中で、デザイナーのナガオカケンメイさんやギャラリストの小山登美夫さんなどが参画してくれることになりました。いずれも“いいものはいい”ときちんと言える方々なので、『8/』のコンセプトを実現する上で最高のメンバーに集まっていただきました」と小林さんは語る。
 それでは「8/」を構成する各コンテンツを見ていこう。ナガオカ氏のディレクションによる「NIPPON VISION GALLERY」には、47都道府県から選ばれた地域のデザインが並ぶ47個のテーブルがそろう。「定期的に企画を立てて、テーマに沿ったものを日本中から集めてきます。例えば、若手建築家がテーマなら、各都道府県から彼らの手による建築模型を47個収集してくる感じです」と小林さん。ナガオカ氏がこれまで年に1回、会場を変えながら続けてきた展覧会「NIPPON VISION」が、今後は常設スペースで展開されるというわけだ。


「HIKARIE ART GALLERY」を運営する小山登美夫氏。古今東西のアートを独自の目線で選び、展示する

 現代アートの希代の目利き、小山登美夫氏運営の「HIKARIE ART GALLERY」は、小山氏が抱えるアーティストの作品を紹介するだけではなく、近代美術、工芸、古美術に至るまで、古今東西のアートを独自の目線で選び、世の中に伝えていく場になる。いわば、小山氏の審美眼を通したアートの歴史が繰り広げられるギャラリーである。
 「HIKARIE SPACE 1/2/3」は2週間単位で展示が入れ替わり、ファッション、建築、デジタルコンテンツといった幅広いコンテンツを扱うアートギャラリー。「WORK SPACE」はクリエイターなどを対象としたシェアオフィス。個人や、数人で活動しているような団体が入居し、作業や活動の拠点として利用する。作り手同士が空間を共有し、交流することによって刺激が生まれ、情報交換の場ともなる。さらに、前面がガラス張りで抜群の景観を誇る「カフェ」では、日本全国の食材やお酒などが紹介されることになるという。
 そして「8/」全体の鍵を握る場所となるのが、フロア中央の約170㎡の多目的スペース「コート」だ。デザインやアートに限らず、幅広いジャンルの展示、ワークショップ、ショートムービー上映など、日替わりで幅広いジャンルの活動が展開される。ここまで説明してきた小林さんは、「こういう自由な雰囲気の文化施設を日本に作りたかった」と語る。

渋谷だから、“街に開かれたクリエイティブの集会所”がつくれる。

 「文化的な接点を求めている人たちが集う、“街に開かれたクリエイティブの集会所”をつくることを目標にしています。クリエイティブな活動をしている人たちが集まり、交流し、発信する。良いものが発信されれば、当然それを見たいという人たちも集ってくる。その循環が繰り返されれば、すごくいい流れができると思います」。これは、渋谷という1日に300万人が出入りする発信力のある街だから実現できること。丸の内や六本木ではできない。クリエイティブフロア「8/」は、作り手と使い手が出会う、まったく新しいクリエイティブスペースになる。

文=田中雄二