フード・ビューティー・ファッションのすべてを“雑貨”としてとらえる。
引き続き、「渋谷ヒカリエ」にオープン予定の「ShinQs(シンクス)」について、株式会社 東急百貨店 渋谷ヒカリエ出店準備室 計画推進担当 課長の小泉忠行さんとマネジャーの大谷香奈子さんに聞いていく。前回、小泉さんは「20代後半〜40代の働く女性たちを購買層の中心として考えた場合、フード・ビューティー・ファッションのすべてを“雑貨”としてとらえる、“Zakka視点”というキーワードが浮かんできました」と語っていた。Zakka視点? 今回はこのキーワードについて掘り下げていこう。
お客さまの気持ちになって商品の配置や組み合わせまで考える。
小泉さんはこう言う。「従来の百貨店は対面販売が主でしたが、ShinQsではお客さま自らがセレクトできるよう、各カテゴリー別のブロックを分かりやすく配置します。ショーケースの中に入っていく感覚でしょうか。お客さまには、自分の気になるモノを眺め、かつ実際に手に取りながら買い物を楽しんでいただきたいと考えています」
続いて大谷さん。「一番大切なのは、お客さまの側に立って考えることだと思います。既存の百貨店だと、ワインも日本酒も同じお酒の売り場で一緒に売っていることが多い。でもShinQsは違います。ワインが飲みたいお客さまのために、ワインと一緒に楽しむ総菜、チーズやナッツ、パンまでを一つのゾーンに集めます。“ワインとその周りの商品を集めたストリートがここにある”という感じですね。お客さまの気持ちになって商品の配置や組み合わせまで考えるのが、今までの百貨店とは大きく違う点です」
ストーリーだったりシチュエーションだったり、女性目線の切り口でおしゃれな雑貨が集まっている。見て回ること自体楽しいし、その中から自分好みのものを選んでいくのはもっと楽しい。雑貨だけではなく、フード・ビューティー・ファッションにも、こういう買い物のスタイルがあっていいはずだ…これが“Zakka視点”の意味ではないだろうか。
大谷さんは、フードフロアを例に挙げて説明していく。「コンセプトは、食べて体の中から美しくなる“ウェルネスビューティーフード”です。だから、例えば韓国料理ならキムチやチヂミだけでなく、コラーゲンたっぷりのサムゲタンも販売する。専門コーナーというよりもフロア全体でコンセプトを強く推し進めていく感じですね。それと働く女性たちは、いろんなものを手早く食べたいと考えていますから、個食に対応したショップも数多く配置していきますよ」。このZakka視点は、さまざまなフロアで展開される。3階には「イン・ザ・バッグ(バッグの中身)」「オン・ザ・デスク(机の上)」を切り口とした、働く女性のセンスを表現するデザイン雑貨売り場が。5階には「キッチン」にフォーカスした世界初の「ザ・コンラン・ショップ キッチン」が誕生するという。
各フロアごとにデザインや香り、BGMまで違う“日本一のレストルーム”。
もう一つ。ShinQsで絶対見逃せないのが“日本一のレストルームを作る”プロジェクトから生まれた「スイッチルーム」である。大谷さんは「お客さまがゆっくりとお化粧直しできる場、あるいは気持ちの切り替えや気合を入れ直す場として使っていただけたらいいなと考えました。各フロアごとにデザインや香り、BGMまでそれぞれ違ったものになっています。3階の風を使ってタバコのにおいを消す「エアシャワーブース」、5階の酸素バー付きマッサージチェアなどを備えたカード会員限定「パウダースペース」、地下2階の授乳中も情報検索できる「ネット授乳室」が特に象徴的な空間になりますね」と語る。
とにかく見どころ、買いどころ満載というShinQs。今までの百貨店とは、明らかに違う施設になるはずだ。
文=田中雄二